バンド

いつまでも同じってわけにはいかないよな

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(すいません…トイレに寄ってもらってもいいですか…)
 
 
大阪からの帰り道、
広くなったハイエースの一番後ろから
俺はLINEを一斉送信していた。
 
 
おしっこが…このままでは漏れるのだ…
誰か、気づいて…
 
 
っていうか、声にすればいいのに
なんだか恥ずかしくて言えないのだ
 
 
文字にするほうがあとあと恥ずかしい気もした
これがデジタルタトゥーってやつか…
 
 
 
俺のあそこの叫びに気づいてくれたスリマ一行は
近くのパーキングエリアで早めの休息をとることになった。
 
 
それにしても、
月が綺麗だ。
 
 
それを伝えられる相手がいないってのは
なんともさみしいことだぜ…なんてどっかの邦ロックが書きそうなことを考えていたら…
 
 
 
見失ってしまった。
 
ハイエースを。
 
 
 
そう、レンタカーだからまったくナンバーもわからないし
形も全然覚えていないのだった。
 
 
 
白…いやグレー…?
 
 
 
月がどんなに明るくたって
覚えていないんじゃ見つけることもできない。
 
 
俺はなんと無力なんだろう。財布も忘れるし。
 
 
 
途方にくれていると
見慣れた顔をしたマネージャーを見つけた。
 
 
子供のようにマネージャーについていく。
 
 
自分で探しもせず。
 
 
車がどこにあるかもわからないのに
人についていけばなんとかなると思っているんだ
 
 
 
もしこの先、マネージャーがいなくなったらどうするんだ?
自分で歩いてハイエースにつけるのか?
 
責任感っていうのは
自分の足で目的地まで歩ける人間が持つんじゃないのか?
 
 
 
下はすっきりしても
酒を飲んだ頭はまた回っている。
負のスパイラルを円々と。
 
 
 
このハイエースにはギターのあきらが乗っていない。
子供ができた関係で別々に帰ることが多くなった。
 
 
 
この先、他のメンバーにだって同じことが起きるかもしれない。
 
 
いつまでも同じってわけにはいかない。
 
 
自分の足でハイエースまで
辿り着かなくてはいけないんだ
 
 
月はきれいで照らしてくれても
道を指し示してくれるわけではないのだ
 
 
さみしくなってありがたくなって
 
 
いつか終わりがくるとしても
こういう時間も忘れたくないなと思ったパーキングエリアだった
 
 
 
名前も忘れちまったけど。

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