初めから自分にできることは何もない
なぜ どうして
何がいけなかったのか
どうすれば良かったのか
どうすれば止められたのか
どれだけ考えてももうわからない
雨がもう少し早く降っていれば
飛ばずにすんだかもしれない
いろんな人たちが受付前に座っている
みんなが同じ空気を吸って
みんなが違うことを考えている
夕飯で指を切ってしまったお母さん
コロナで不安定になってしまった女の人
股を打って泣いている子供
車に轢かれた少女の両親
飛び降りで亡くなった人の旦那さん
初めから自分にできることは何もない
僕の仕事は救急車の受付
受付をして
会計をして
なくした人からお金をもらって
そしてそれで生きている
悲しみとお金を勝手にもらって
家族の悲しみをほんの少しも減らせてやれない
誰かがロビーで笑ってる
僕も君もあなたも他人だから
初めから自分にできることは何もない
雨がもう少し早く降っていればよかったのに
それをまた歌してほしい